東急・小田急→西武へ譲渡 「サステナ車両」決定 出遅れた車両省エネ化を一気に解決へ

環境負荷の少ない中古車両を「サステナ車両」と称して他社から購入することを検討していた西武鉄道は、東急電鉄から「9000系」、小田急電鉄から「8000形」の各車両を譲り受けることで合意しました。

狭山線など支線区で運行しており、今後は「サステナ車両」への置き換えが進められる西武新101系電車(たかさくら/写真AC)
狭山線など支線系で運行しており、今後は「サステナ車両」への置き換えが進められる西武新101系電車(たかさくら/写真AC)

東急「9000系」と小田急「8000形」合わせて100両

「サステナ車両」は、他社からの譲受車両を指す西武独自の呼称です。新型コロナウイルス禍を受けた鉄道事業の固定費削減策の一つとして、2022年5月に公表された中期経営計画の進捗報告資料に初めて出現した単語です。車両の選定にあたっては、メンテナンスが容易な無塗装車体や、消費電力の少ないVVVFインバーター制御車両などを念頭に検討が進められました。

池袋線・新宿線など本線系では新型車両40000系の導入などにより刷新が進む一方、国分寺線や西武秩父線などの支線系は消費電力の多い直流モーターを搭載する塗装車両がいまだ主力です。

保有車両のVVVF化率100%を達成した東急や小田急、京王電鉄などに比べて車両面の省エネ化・省力化が遅れている西武にとって、これを早急に取り戻すことが至上命題でした。メンテナンスの効率化や使用電力の削減、環境負荷の低減といった課題を早期に解決するため、新造ではなくサステナ車両の譲受によって旧型車両を置き換える案が浮上したわけです。

大手鉄道事業者間で異例となる大規模な車両売買交渉は水面下で進められ、交渉先や車両形式などはこれまで明らかにされていませんでした。3社の合同発表によると、東急が「9000系」、小田急が「8000形」車両をそれぞれ西武に譲渡することで連携していくことが決まりました。西武は2024年度から100両程度のこれらサステナ車両を順次導入し、2030年度までに100%VVVF化を目指します。

(西武が「サステナ車両」として導入する東急9000系、小田急8000形の概要、導入路線など詳細は下の図表を参照)

【路線図で解説】西武が「サステナ車両」として導入する東急9000系、小田急8000形の概要、導入路線

サステナ第1編成はどっち? 24年度運行開始

ステンレス無塗装車体の東急9000系は、同社で初めてVVVF制御を本格採用した省エネ車両として東横線でデビューし、現在は大井町線の各駅停車として運用されています。西武では多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線で2025年度以降に順次導入され、新101系、2000系、4000系などの旧型車両を置き換えていく計画です。

小田急線で現在も活躍中の8000形は、導入当初から界磁チョッパ制御や電力回生ブレーキを搭載した高性能車両です。普通鋼製の塗装車体ですが、VVVF化リニューアル工事で省エネ性能が向上しており、導入予定である国分寺線の現行車両を置き換える両数を確保できることから選定されたようです。こちらはひと足早く、2024年度にサステナ車両第1編成として運行開始する予定です。

サステナ車両は、旧型車両に比べて使用電力量を約50%削減できる性能を有しています。100両の導入が完了する2030年度時点で、一般家庭約2,000世帯の排出量に相当する年間約5,700トンのCO2削減が実現できると西武は見込んでいます。

また、一般に100両の新車製造時に約9,400トン、車両廃棄時には約70トンのCO2排出が発生すると試算されています。車両リユースによりこれらも抑制できることから、資源の廃棄を減らし、自然環境への負荷を軽減するSDGsの取り組みとして発信していく考えです。

西武鉄道で車両部長を務める小川克弘さんは、「新造車両とサステナ車両を組み合わせ、車両の省エネルギー化をスピード感を持って推進します。また、これを機に東急、小田急との技術連携を深め、よりサステナブルな輸送サービスをお客さまに提供します」とコメントしています。

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